第39回栃木県透析医学会に参加しました。

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9/17(土)、獨協医科大学で開催された、第39回栃木県透析医学会に参加しました。当院から奥田院長が「合併症」セッションで座長を務めました。また、4演題を看護部・技術部・検査部で報告しました。
「血液透析患者における透析アミロイドーシスに対するβ2-microglobulin吸着カラム(リクセル®)の3年間の長期効果の検討」の演題において優秀演題賞を受賞いたしました。

 

①血液透析患者における透析アミロイドーシスに対するβ2-microglobulin吸着カラム(リクセル®)の3年間の長期効果の検討

医療法人開生会 奥田クリニック

○井上靖宏(イノウエヤスヒロ、臨床工学技士)、武田光博、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、越井正太郎、村山勉、新井美明、一杉政弘、古沢幸男、神山康子、高橋秀明、奥田康輔

【背景・目的】本邦では、長期透析歴を持つ患者が増加しており、当院では透析歴が30年以上の患者が9.4%と全国平均の2.0%より大幅に多い。長
期透析の合併症として、透析アミロイドーシス(DRA)は重要で、患者のADLを大きく妨げる原因となる。β2-MG吸着カラム(リクセル®)は原因物質であ
るβ2-MGを吸着し、DRAの症状を緩和することが知られているが、その長期な効果についての報告はない。今回、DRAによる痛みがある患者に対して、
リクセル®を導入し、3年間継続できた患者が6名集積できたので、その長期的な治療効果を検証した。

【対象】対象は当院にて通院透析を行い、リクセル®を3年間以上継続できている患者6名(男性4名、女性2名、リクセル開始時平均年齢65.8±3.9歳、平均透析歴33.1±3.0年、原疾患:全例慢性糸球体腎炎)とした。

【方法】リクセル®は保険収載に則り、1年間を1クールとして継続し、1ヶ月間の休止を挟んで3クール施行した。その間のADL、痛み、こわばりをスコア化して評価し、更にピンチメーターによる指のつまみ力、β2-MG、MMP-3を測定し、その推移から対応のあるT検定にて治療効果を検証した。

【結果】痛みスコアは、平均値でリクセル®開始前12.9±8.5→リクセル®3年後2.3±1.5と著明な改善を認め(p<0.05)3年間を通じて改善し続けていた。ADLとこわばりについても改善傾向を認めた。つまみ力では開始前(右2.42±1.59kg左1.67±0.75kg)→3年後(右3.86±2.05kg左3.90±1.04kg)と有意な改善を認めた(p<0.05)。透析前β2-MGは開始前21.8±5.2→3年後18.3±2.3と有意に低下していた(p<0.05)が、MMP-3は有意な低下は示さなかった。

【考察】リクセル®はDRAの症状、特に痛みに対して明らかな改善効果を示し、途中1年毎に1ヶ月間の中断期間があっても、3年間の長期間に渡って持続的に痛みを緩和する効果が確認出来た。また、指のつまみ力も回復させることが出来たことも考えると、DRAによる痛みが出現した患者には早期にリクセル®を導入することで痛みを緩和し、継続すれば長期に渡りADL低下を防げる可能性が示唆された。今後も本邦では、ますます長期透析歴を有する患者の増加が予測されるが、その中でリクセル®は重要な役割を果たすことが期待される。

 

②超音波検査(US)によるバスキュラーアクセス(VA)管理はVA閉塞予防に有用である

(医)開生会 奥田クリニック

○古澤洋一(フルサワヨウイチ、臨床検査技師)、中野紗希、高橋 梓、武田光博、井上靖宏、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、越井正太郎、
古沢幸男、村山 勉、一杉政弘、新井美明、高橋秀明、奥田康輔、八木澤隆(自治医大腎臓外科)

【目的】USはシャント狭窄症の評価に有用である。当院では2014年9月より、VAに異常を認める患者には異常発見時とその後3ヶ月に1回、異常がない患者には年に1回のUSをルーチン化したので、これがVA閉塞予防に有用であったかを検討した。

【対象・方法】対象は当院にて内シャント(AVF)もしくは人工血管(AVG)にて維持透析を行っている患者とし、USルーチン化前2013年9月~2014年8月とUSルーチン化後2014年9月~2015年8月それぞれ1年間のUS件数、PTA件数、VA閉塞による再造設件数を比較検討した。PTAの適応は理学所見と時間的経過も参照にしながら、USにてFlow Volume (FV)<500ml/min, Resistance Index(RI)≧0.6を目安に決定した。統計解析にはχ二乗検定を用いた。

【結果】2年間の比較でUS件数は130→292件と著明に増加した。PTA件数は56→57件と著変なく、VA閉塞による再造設数は14→6件(p<0.05)と有意に減少した。

【考察】VA閉塞を有意に減少させることが出来たのは、理学所見のみでは見逃していた狭窄をUSにより早期に発見し、早期PTAに繋げることが出来たためと考えられた。一方でPTA件数の増加はなく、これは、かつては理学所見のみの判断でPTAを行っていた症例の中に、狭窄が軽度で経過観察出来た患者も含まれていたが、USをルーチン化することで、そのような患者を正確に判断し、経過観察出来たことで相殺されたためと考えられた。すなわち、USはPTA適応のふるい分けに非常に有用であった。

 

③当院におけるフットケア導入による透析患者の下肢切断予防効果の検討

(医)開生会 奥田クリニック

○小原梢(オバラコヅエ、看護師)、鈴木恵、渡部文子、大木由佳里、小山田ひとみ、花澤美敬、増渕里美、和田部章子、神山康子、岩波沙織、古澤洋一、高村キエ子、高橋秀明、奥田康輔

【目的】近年透析患者の高齢化や糖尿病の増加により下肢切断に至る患者が増加している。本年より下肢末梢動脈疾患指導管理加算が新設され、その内容は、透析患者の下肢切断を防ぐために足の状態を定期的にチェックし、異変のある患者には専門施設を紹介するという制度である。当院では2011年から全患者に定期的なフットケアを導入し下肢病変の早期発見に努め、内科的治療に抵抗を示す患者には早期に血管外科へ紹介してきた。これらの取り組みが下肢切断予防に効果的であったかを検証したので報告する。

【方法】当院で作成したフットケア分類表に基づき、糖尿病(DM)かつABI≦0.9の患者・足潰瘍の既往がある患者(高リスク群:H群)は毎月、DMがなくABI≦0.9の患者・DMがあるがABI≧0.9の患者(中リスク群:M群)は3ヶ月に1回、それ以外の患者(低リスク群:L群)は年に1回フットチェックを行った。ABI値は全例年に1回測定し、ABI≦1.0の患者には半年に1回測定した。今回、フットケア導入後の5年間で新たに足潰瘍を発症した患者について、分類表のリスク群を検証した。また、定期的なフットケア導入以前の2006年~2010年の5年間と、導入後の2011年~2015年の5年間とで下肢切断をした患者数を比較し、切断部位により大切断(大腿または下腿での切断)、小切断(足関節以下での切断)に分けて検討した。

【結果】導入後5年間で新たな足潰瘍の発症は19名に認め、うち13名がH群、6名がM群で、L群は皆無であった。また、導入前5年で大切断は2名、小切断は3名、導入後5年では大切断は0名、小切断は3名であった。

【考察】当院のフットケア分類表のリスク分類は適切であった。フットケア導入が功を奏し大切断に至る患者を完全に防ぐことが出来たと考えられた。

 

④長期入院透析患者に対するグリーンセラピー(園芸療法)の試み

(医)開生会 奥田クリニック

○花澤美敬(ハナザワミユキ、看護師)、清水里美、武蔵明子、小林美紀、鈴木恵、渡部文子、増渕里美、馬場内祐紀、和田部章子、岡みどり、小原梢、高村キエ子、古沢幸男、高橋秀明、奥田康輔

【背景・目的】近年、透析患者の高齢化や合併症により、通院困難となり長期入院が必要な患者が増加してきている。長期入院の患者の中には、希望を持てずうつ傾向となったり、意欲低下がみられる場合がある。当院では、このような患者でも楽しみを持ってもらえるようにするため、屋上庭園に家庭菜園ができるスペースを設け、苗の植え付けから収穫までをグリーンセラピー(GT)と称して、入院患者に参加してもらっている。今回当院でのGTの取り組みと患者への影響について報告する。

【方法】患者毎に担当看護師を決め、当院の屋上庭園を利用し、患者と一緒に野菜の苗の植え付けから、水やり、肥料やり、収穫を行い、実際に収穫した野菜を食べてもらう。その間の患者さんの様子や変化を観察した。

【結果】認知症があり通院が困難となった男性患者では、苗植え付け時より、土いじりに興味を示し、収穫時などには笑顔が見られるようになった。また、GTへ参加することで、不穏症状が緩和されることが見られた。廃用症候群により通院困難となった女性患者では、日中はほぼ寝たきりであったが、GTを開始してから、自ら水やりに行こうとする意欲が見られ、また、水やりや収穫などの細かな作業を行うことで振戦が軽減し、日常動作の向上が見られた。日常生活動作が低下し入院となった女性患者では、自分が収穫した野菜を担当医師に食べてもらいたいなどの発言があり、実際にそれを医師が食べて感謝することなどで、患者自身に役割を実感してもらうことが出来た。

【考察】長期入院透析患者にGTを導入することで、笑顔の回数の増加、認知症の周辺症状の緩和や患者の意欲や生活動作の向上などが見られ、GTが患者の精神面に良い影響を与える可能性が考えられた。また、介護を受けざるを得なくなった患者でも、GTで役割を持ってもらうことで、存在価値を高めることが出来ると考えられた。さらに、GTを通じて医療者と患者との間に共通の話題が出来、コミュニケーションを深めるのにも有用であった。