日本透析医学会雑誌に奥田クリニックの論文が掲載されました。

日本透析医学会雑誌2023年11月号に奥田院長が執筆した論文が掲載されました。

透析患者様は新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いことが知られており、通常の感染対策、早期発見早期治療に加えて、ワクチンによる重症化予防が大変重要です。しかし、透析患者様では2回目まではワクチンを接種しても、一般と比較して抗体価が上がりにくい(25-40%)ことが知られていました。
今回の調査で、3回目にモデルナのワクチンを接種した患者様では1ヶ月後に抗体価が100倍以上に上昇し、健常人と同等レベルになることが分かりました。
抗体価と感染予防効果、重症化予防効果には相関があることが知られているため、透析患者様では3回目以降のワクチン接種にて、その低反応性を克服できる可能性が示唆されました。
さらにステロイドを内服中の患者様や、BMIが低値の患者様でも抗体価が上昇しにくいことも判明しました。ステロイドを内服していると抗体価が上がりにくいことはよく知られた事実ですが、痩せている透析患者様ほど抗体価が上がりにくいことはこれまで国内外で知られておらず、新たな発見となりました。
痩せを伴う栄養状態が悪い患者さんでは、ワクチンを打っていてもより注意して感染から守っていく必要があることが示唆されました

<論文要旨>
血液透析(HD)患者におけるモデルナ社製COVID-19ワクチン3回目接種前後のAbott社製S1-RBD IgG抗体価を測定し、抗体価に影響を与える因子を検討した。ワクチンは2回目まではファイザー社製BNT162b2 (以下ファイザー)を使用し、2回目接種6カ月後に3回目にモデルナ社製mRNA-1273(以下モデルナ)を接種した。抗体価は接種前で中央値275(149-571) AU/mLから、接種1ヵ月後で29,737 (14,984-46,185) AU/mL(108.1倍)と著明に上昇した。重回帰分析では、接種後抗体価はステロイド内服者で低く、BMI30以上の患者を除くとBMIが低い患者ほど低値だった。ステロイド内服者と痩せを認める透析患者では、ワクチン接種後もより感染防護に配慮する必要があることが示唆された。