第68回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

第68回日本透析医学会学術集会が、6月16日(金)~18日(日)の3日間、兵庫県神戸市で開催されました。コロナ以降初めての現地のみの開催となり、とても盛況な学会でした。当院からは10名参加して2演題ポスター発表をしました。
今回の学会参加で多くの情報や刺激を得ることができました。今後の当院での透析医療に反映させていこうと思います。


当院の血液透析患者と医療従事者における3・4回目COVID-19ワクチン接種前後のIgG抗体価の検討

[演者] 奥田 康輔
[共同演者] 高橋 梓, 古澤 洋一, 大森 康行, 高橋 秀明
(医)開生会奥田クリニック

【目的】血液透析患者(HD 群)と医療従事者(健常群)における3・4 回目COVID-19 ワクチン接種前後の抗体価を測定し影響因子を検証
【対象】HD 群(N=135),健常群(N=66)
【方法】3・4 回目ともHD 群はモデルナ,健常群はファイザーワクチンを用い,接種前・接種1 ヶ月後に抗スパイク蛋白IgG 抗体価(Abbot社)を測定,抗体価に影響する因子を検討
【結果】抗体価は3 回目接種前→接種1 ヶ月後→ 4 回目接種前→接種1 ヶ月後にて中央値でHD 群:274 → 29737 → 8782 → 38728AU/mL,健常群:676 → 23475 → 6001 → 22439AU/mL と,3 回目接種前は健常群が有意に高かった(P < 0.001)が,3 回目接種後には逆転し,4回目接種1 ヶ月後ではHD 群が健常群の1.7 倍と有意に高くなった(P < 0.001).HD 群では抗体価はステロイド内服者で有意に低く,BMI < 30 ではBMI と有意な正の相関を認めた.
【考察】透析患者ではワクチン接種2 回目までは抗体価が上昇しにくいが,3 回目以降は大きく上昇する.抗体価とBMI に正の相関を認め,栄養状態との関連が示唆された.

 

当院の血液透析患者と医療従事者におけるCOVID-19ワクチン接種後の副反応についての検討

[演者] 高橋 梓
[共同演者] 奥田 康輔, 古澤 洋一, 大森 康行, 高橋 秀明
(医)開生会奥田クリニック

【目的】血液透析患者(HD 群)と医療従事者(健常群)におけるCOVID-19 ワクチン接種後の副反応について検討する.
【方法】副反応アンケートに回答があった健常群(N=66)とHD 群(N=128)を対象とした.副反応は接種部位の痛み等の局所性と,発熱等の全身性に分け,計16 項目とした.健常群は1-4 回目,HD 群は3,4 回目のワクチン接種後の結果が得られた.各群における副反応発現頻度,年齢や抗スパイク蛋白IgG 抗体価(Abbot 社)との関連を検討した.健常群は全てファイザーを使用したが,HD 群は3,4 回目でモデルナを使用した.
【結果】抗体価は3 回目接種前までは健常群が有意に高かったが,3回目以降は逆転し,4 回目接種後ではHD 群の方が有意に高くなった.一方,副反応発現頻度は健常群よりHD 群の方が低かった.両群とも60 歳未満で有意に発現頻度が高かった.
【考察】透析患者はCOVID-19 の重症化リスクが高いが,3 回目以降のワクチン接種により抗体価が著明に上昇し,副反応も出にくいという面からも,ワクチン接種が推奨される.