第62回日本透析医学会学術集会に参加しました。

第62回日本透析医学会学術集会に参加しました。

第62回日本透析医学会学術集会が、6月16日(金)~18日(日)の3日間、横浜市で開催されました。 当院からは3演題を発表し、12名参加しました。 ○血液透析患者に対するデノスマブの治療効果の検討 演者:高橋秀明 ○透析患者におけるスクロオキシ水酸化鉄(SO)の使用経験 演者:古澤洋一 ○透析アミロイドーシスに対するβ2-MG吸着カラム(リクセル®)の3年間の長期効果の検討 演者:井上靖宏   今回の発表や学会参加を通じて得た最先端の情報を念頭に置き、患者さまにより良い透析医療を提供できるよう心掛けてまいります。

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第19回日本腎不全看護学会学術集会・総会に参加しました。

第19回日本腎不全看護学会学術集会・総会に参加しました。

11月26日(土)・27日(日)、大阪・アジア太平洋トレードセンターにて第19回日本腎不全看護学会学術集会・総会が開催され、当院からは6名が参加してきました。 奥田クリニック看護部から「当院におけるフットケア導入による透析患者の下肢切断予防効果の検討」「長期入院透析患者に対するグリーンセラピー(園芸療法)の試み」の2題を発表しました。

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第39回栃木県透析医学会に参加しました。

第39回栃木県透析医学会に参加しました。

9/17(土)、獨協医科大学で開催された、第39回栃木県透析医学会に参加しました。当院から奥田院長が「合併症」セッションで座長を務めました。また、4演題を看護部・技術部・検査部で報告しました。 「血液透析患者における透析アミロイドーシスに対するβ2-microglobulin吸着カラム(リクセル®)の3年間の長期効果の検討」の演題において優秀演題賞を受賞いたしました。 ①血液透析患者における透析アミロイドーシスに対するβ2-microglobulin吸着カラム(リクセル®)の3年間の長期効果の検討 医療法人開生会 奥田クリニック ○井上靖宏(イノウエヤスヒロ、臨床工学技士)、武田光博、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、越井正太郎、村山勉、新井美明、一杉政弘、古沢幸男、神山康子、高橋秀明、奥田康輔 【背景・目的】 本邦では、長期透析歴を持つ患者が増加しており、当院では透析歴が30年以上の患者が9.4%と全国平均の2.0%より大幅に多い。長 期透析の合併症として、透析アミロイドーシス(DRA)は重要で、患者のADLを大きく妨げる原因となる。β2-MG吸着カラム(リクセル®)は原因物質であ るβ2-MGを吸着し、DRAの症状を緩和することが知られているが、その長期な効果についての報告はない。今回、DRAによる痛みがある患者に対して、 リクセル®を導入し、3年間継続できた患者が6名集積できたので、その長期的な治療効果を検証した。 【対象】 対象は当院にて通院透析を行い、リクセル®を3年間以上継続できている患者6名(男性4名、女性2名、リクセル開始時平均年齢65.8±3.9歳、平均透析歴33.1±3.0年、原疾患:全例慢性糸球体腎炎)とした。 【方法】 リクセル®は保険収載に則り、1年間を1クールとして継続し、1ヶ月間の休止を挟んで3クール施行した。その間のADL、痛み、こわばりをスコア化して評価し、更にピンチメーターによる指のつまみ力、β2-MG、MMP-3を測定し、その推移から対応のあるT検定にて治療効果を検証した。 【結果】 痛みスコアは、平均値でリクセル®開始前12.9±8.5→リクセル®3年後2.3±1.5と著明な改善を認め(p<0.05)3年間を通じて改善し続けていた。ADLとこわばりについても改善傾向を認めた。つまみ力では開始前(右2.42±1.59kg左1.67±0.75kg)→3年後(右3.86±2.05kg左3.90±1.04kg)と有意な改善を認めた(p<0.05)。透析前β2-MGは開始前21.8±5.2→3年後18.3±2.3と有意に低下していた(p<0.05)が、MMP-3は有意な低下は示さなかった。 【考察】 リクセル®はDRAの症状、特に痛みに対して明らかな改善効果を示し、途中1年毎に1ヶ月間の中断期間があっても、3年間の長期間に渡って持続的に痛みを緩和する効果が確認出来た。また、指のつまみ力も回復させることが出来たことも考えると、DRAによる痛みが出現した患者には早期にリクセル®を導入することで痛みを緩和し、継続すれば長期に渡りADL低下を防げる可能性が示唆された。今後も本邦では、ますます長期透析歴を有する患者の増加が予測されるが、その中でリクセル®は重要な役割を果たすことが期待される。 ②超音波検査(US)によるバスキュラーアクセス(VA)管理はVA閉塞予防に有用である (医)開生会 奥田クリニック ○古澤洋一(フルサワヨウイチ、臨床検査技師)、中野紗希、高橋 梓、武田光博、井上靖宏、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、越井正太郎、 古沢幸男、村山 勉、一杉政弘、新井美明、高橋秀明、奥田康輔、八木澤隆(自治医大腎臓外科) 【目的】 USはシャント狭窄症の評価に有用である。当院では2014年9月より、VAに異常を認める患者には異常発見時とその後3ヶ月に1回、異常がない患者には年に1回のUSをルーチン化したので、これがVA閉塞予防に有用であったかを検討した。 【対象・方法】 対象は当院にて内シャント(AVF)もしくは人工血管(AVG)にて維持透析を行っている患者とし、USルーチン化前2013年9月~2014年8月とUSルーチン化後2014年9月~2015年8月それぞれ1年間のUS件数、PTA件数、VA閉塞による再造設件数を比較検討した。PTAの適応は理学所見と時間的経過も参照にしながら、USにてFlow Volume (FV)<500ml/min, Resistance Index(RI)≧0.6を目安に決定した。統計解析にはχ二乗検定を用いた。 【結果】 2年間の比較でUS件数は130→292件と著明に増加した。PTA件数は56→57件と著変なく、VA閉塞による再造設数は14→6件(p<0.05)と有意に減少した。 【考察】 VA閉塞を有意に減少させることが出来たのは、理学所見のみでは見逃していた狭窄をUSにより早期に発見し、早期PTAに繋げることが出来たためと考えられた。一方でPTA件数の増加はなく、これは、かつては理学所見のみの判断でPTAを行っていた症例の中に、狭窄が軽度で経過観察出来た患者も含まれていたが、USをルーチン化することで、そのような患者を正確に判断し、経過観察出来たことで相殺されたためと考えられた。すなわち、USはPTA適応のふるい分けに非常に有用であった。 ③当院におけるフットケア導入による透析患者の下肢切断予防効果の検討 (医)開生会 奥田クリニック ○小原梢(オバラコヅエ、看護師)、鈴木恵、渡部文子、大木由佳里、小山田ひとみ、花澤美敬、増渕里美、和田部章子、神山康子、岩波沙織、古澤洋一、高村キエ子、高橋秀明、奥田康輔 【目的】 近年透析患者の高齢化や糖尿病の増加により下肢切断に至る患者が増加している。本年より下肢末梢動脈疾患指導管理加算が新設され、その内容は、透析患者の下肢切断を防ぐために足の状態を定期的にチェックし、異変のある患者には専門施設を紹介するという制度である。当院では2011年から全患者に定期的なフットケアを導入し下肢病変の早期発見に努め、内科的治療に抵抗を示す患者には早期に血管外科へ紹介してきた。これらの取り組みが下肢切断予防に効果的であったかを検証したので報告する。 【方法】 当院で作成したフットケア分類表に基づき、糖尿病(DM)かつABI≦0.9の患者・足潰瘍の既往がある患者(高リスク群:H群)は毎月、DMがなくABI≦0.9の患者・DMがあるがABI≧0.9の患者(中リスク群:M群)は3ヶ月に1回、それ以外の患者(低リスク群:L群)は年に1回フットチェックを行った。ABI値は全例年に1回測定し、ABI≦1.0の患者には半年に1回測定した。今回、フットケア導入後の5年間で新たに足潰瘍を発症した患者について、分類表のリスク群を検証した。また、定期的なフットケア導入以前の2006年~2010年の5年間と、導入後の2011年~2015年の5年間とで下肢切断をした患者数を比較し、切断部位により大切断(大腿または下腿での切断)、小切断(足関節以下での切断)に分けて検討した。 【結果】 導入後5年間で新たな足潰瘍の発症は19名に認め、うち13名がH群、6名がM群で、L群は皆無であった。また、導入前5年で大切断は2名、小切断は3名、導入後5年では大切断は0名、小切断は3名であった。 【考察】 当院のフットケア分類表のリスク分類は適切であった。フットケア導入が功を奏し大切断に至る患者を完全に防ぐことが出来たと考えられた。 ④長期入院透析患者に対するグリーンセラピー(園芸療法)の試み (医)開生会 奥田クリニック ○花澤美敬(ハナザワミユキ、看護師)、清水里美、武蔵明子、小林美紀、鈴木恵、渡部文子、増渕里美、馬場内祐紀、和田部章子、岡みどり、小原梢、高村キエ子、古沢幸男、高橋秀明、奥田康輔 【背景・目的】 近年、透析患者の高齢化や合併症により、通院困難となり長期入院が必要な患者が増加してきている。長期入院の患者の中には、希望を持てずうつ傾向となったり、意欲低下がみられる場合がある。当院では、このような患者でも楽しみを持ってもらえるようにするため、屋上庭園に家庭菜園ができるスペースを設け、苗の植え付けから収穫までをグリーンセラピー(GT)と称して、入院患者に参加してもらっている。今回当院でのGTの取り組みと患者への影響について報告する。 【方法】 患者毎に担当看護師を決め、当院の屋上庭園を利用し、患者と一緒に野菜の苗の植え付けから、水やり、肥料やり、収穫を行い、実際に収穫した野菜を食べてもらう。その間の患者さんの様子や変化を観察した。 【結果】 認知症があり通院が困難となった男性患者では、苗植え付け時より、土いじりに興味を示し、収穫時などには笑顔が見られるようになった。また、GTへ参加することで、不穏症状が緩和されることが見られた。廃用症候群により通院困難となった女性患者では、日中はほぼ寝たきりであったが、GTを開始してから、自ら水やりに行こうとする意欲が見られ、また、水やりや収穫などの細かな作業を行うことで振戦が軽減し、日常動作の向上が見られた。日常生活動作が低下し入院となった女性患者では、自分が収穫した野菜を担当医師に食べてもらいたいなどの発言があり、実際にそれを医師が食べて感謝することなどで、患者自身に役割を実感してもらうことが出来た。 […]

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第61回日本透析医学会学術集会・総会に参加しました。

第61回日本透析医学会学術集会・総会に参加しました。

6月10日~12日まで大阪市で日本透析医学会学術集会が開催され、当院から11名が参加してきました。当院からは、検査部の古澤洋一がシャントエコーをルーチン化したことで突然のシャント閉塞を減少させる事が出来た事を報告してきました。 学会への参加を通じて、多くのスタッフが新しい知識を得ることが出来ましたので、日頃の患者様への診療に活かして行こうと思います。 ○超音波検査(US)によるバスキュラーアクセス(VA)管理はVA閉塞予防に有用である (医)開生会奥田クリニック○古澤洋一、中野紗希、高橋梓、井上靖宏、越井正太郎、村山勉、高橋秀明、奥田康輔、八木澤隆(自治医大腎臓外科) 【目的】USはVAの評価に有用である。VAに異常を認める患者にUSをルーチン化し、VA閉塞予防に有用か検討した。 【方法】対象は当院維持透析患者全員とし、USルーチン化前2013年9月~2014年8月とUSルーチン化後2014年9月~2015年8月それぞれ1年間のVA閉塞件数を検討した。ルーチン化前は必要時のみUSを行っていたが、ルーチン化後は理学所見に異常があれば必ずUSにて形態評価、機能評価を行った。USにて理学所見と一致した異常があればPTAを行い、治療直後にもUSによる評価を行った。その後は3ヶ月毎に医師の診察とUSを定期的に行うようにした。 【結果】2年間の比較でUS数は130→292件:+125%と著明に増加、PTA数は56→57件:+1.8%増と大きな変化はなかったが、VA閉塞による再造設数は14→6件:-57%と著明に減少した。 【考察】VA管理においてUSを定期的に実施することで、早期に適正にPTAを行うことが出来たため、VA閉塞を減少させることが出来た。

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第38回栃木県透析医学会に参加しました。

第38回栃木県透析医学会に参加しました。

9/26(土)、獨協医科大学で開催された、栃木県透析医学会に参加しました。 当院から奥田院長が「検査・合併症」セッションで座長を務めました。また「透析困難症に対する前希釈オンラインHDFの効果」「透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の鉄動態への影響と貧血改善効果の検討」「透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の便秘改善効果の検討」の3演題を技術部・検査部・栄養部で報告しました。 ①透析困難症に対する前希釈オンラインHDFの効果 ○越井正太郎 一杉政弘 新井美明 村山勉 田崎浩孝 歌田智也 岩波沙織 井上靖宏 古沢幸男 増渕里美 高橋秀明 奥田康輔 【目的】透析困難症の患者に対して前希釈オンラインHDF(以下preHDF)はどの程度、またどのように有効かを検討する。 【対象】当院にて透析困難症を認める患者6名(平均年齢79.7歳、平均透析歴7年5か月、男性3名、女性3名、DM2名、非DM4名) 【方法】血液透析(HD)からpreHDF(totalQD 500ml/min, Qd 350ml/min, Qs 150ml/min, MFX-15E)に変更し、preHDFへの変更前後30セッションでの治療中の処置(下肢アップ、補液、除水停止、時間除水量低減、早めに終了)回数、血圧(透析前血圧、最低血圧、透析後血圧、血圧低下率)を調査した。また、この間のBUN, Cr, Ca, P, Hb, Alb, Kt/V, ドライウェイト(DW)、ESA投与量、CTRの平均値も合わせて検討した。統計解析は対応のあるt検定とし、P<0.05を有意とした。 【結果】HD期からpreHDF期で、1回の治療中の処置は平均1.38±0.67回→0.64±0.34回へ有意に減少(P<0.05)し、透析前血圧は平均128±19→144±22mmHgと有意に上昇した(P<0.05)。最低血圧、透析後血圧はそれぞれ平均101±14→115±17mmHg, 123±14→137±20mmHgと上昇傾向を示したが、有意ではなかった(P=0.070, P=0.056)。血圧低下率は20.4±11.0→19.0±6.5%とやや減少傾向を示したが、有意ではなかった(P=0.346)。その他各種データ、総除水量、DW、ESA投与量、CTRはいずれも有意な変化は示さなかった。また1症例でオンラインHDFに変更後3ヶ月で4.9kgのDW増加があり、オンラインHDFによる食欲増進が示唆された。 【結論】preHDFは透析困難症の患者に対して有効であることが確認された。透析前血圧が有意に上昇しており、等張液の補液による透析中の血圧安定化作用のみでなく、心機能改善など他の要因が関連している可能性が示唆された。 ②透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の鉄動態への影響と貧血改善効果の検討 ○古澤洋一 中野紗希 高橋梓 大盛千恵 遠藤佳緒里 新井和恵 神山康子 小原梢 高橋秀明 奥田康輔 【目的】鉄含有の新リン吸着薬、FCHのリン吸着効果と鉄動態の変化及び貧血改善効果の検討。 【対象】当院維持透析患者37名(男性23名,女性14名,平均年齢64.0歳,平均透析歴12.8年,DM15名,非DM22名)を対象とした。ESA製剤を使用しており、1年以内に鉄剤使用歴のある高リン血症患者でFCHを新規に開始、もしくは他のリン吸着剤から切替えた。塩酸セベラマー,ビキサロマーで便秘がある患者,炭酸カルシウム3g/日以上内服している、または補正Ca9.0mg/dL以上の患者は積極的にFCHに切替えた。 【方法】FCH投与量は750~1500mg/日に留めた。FCH開始前と開始後1,2,46ヶ月の血清P,補正Ca,iPTH, Hb,フェリチン,TSAT,ESA,フェジン投与量を検討した。またリン吸着効果は各リン吸着剤の1日当たりの投与量を各薬剤の力価で補正し、総合スコア化としてその経過を調査した。FCH中止条件は腹部症状とフェリチン≧300ng/mLとした。 【結果】FCH投与前後半年間で血清P,補正Ca,iPTHに有意差なくリン吸着剤スコアにも変動なし。TSAT,フェリチン,HbはFCH投与後有意に上昇し、フェジン投与量は有意に減量出来た。ESA投与量はFCH開始1ヶ月より減量し、2ケ月以降も有意に減量出来た。副作用で37名中8名が中止した。 【考察】血清Pとリン吸着剤スコアに変動がなかった為、FCHのリン吸着効果は切替え設定相当の効果ありと考えられた。貧血改善効果は含有鉄成分が影響し、ESA,フェジン減量に繋がったと考えられた。FCH少量投与でもフェリチン過剰となった症例もあったため、鉄動態のモニターは必要である。 ③透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の便秘改善効果の検討 ○遠藤佳緒里 大盛千恵 新井和恵 神山康子 小原梢 古澤洋一 高橋秀明 奥田康輔 【目的】新規リン吸着薬クエン酸第二鉄水和物(以下FCH)には、約10%に下痢の副作用が見られる。また一般に透析患者は便秘傾向にあり、特にポリマー系のリン吸着剤にて便秘の副作用を認めることが多い。FCHの下痢の副作用が便秘及び、下剤の服用量にどの程度影響を及ぼすか検討した。 【対象】当院維持透析患者37名(男性23名、女性14名、平均年齢64.0歳、平均透析歴12.8年)で、ESA製剤を使用しており、1年以内に鉄剤使用歴のある高リン血症患者を対象とした。塩酸セベラマー・ビキサロマーで便秘がある患者、炭酸Ca3g/日以上内服、または補正Ca9.0mg/dL以上の患者には積極的にFCHに切り替え投与した。 【方法】対象患者にFCH750~1500mg/日を投与。投与開始前と開始後1,2,4,6ヶ月の血清P、補正Ca、iPTHの測定値を検討した。FCHのリン吸着効果は、それぞれのリン吸着剤の吸着能に応じて、炭酸カルシウム(500)1T、炭酸ランタン(250)1Tをそれぞれ4点、塩酸セベラマー(250)1T、ビキサロマー(250)1Cをそれぞれ1点、FCH(250)1Tを2点としてスコア化して検討した。便秘の改善効果をRomeⅡアンケートで調査、下剤量とともにスコア化して評価し、FCHの副作用も調査した。 【結果】FCH投与前後でリン吸着剤スコアに変動なく、血清P、補正Ca、iPTHの経過にも有意差はなかった。便秘改善度全体では有意差は見られなかったが、硬い便の経験を問う設問において、開始2ヶ月後で有意に低下し軟便化の傾向を示した(0.8→0.3スコア:P<0.05)。FCH自体の便秘改善効果を検証するため、ポリマー系リン吸着剤を減量・中止した群(A群)、変更なし群(B群)にわけ、下剤量と便秘スコアを合わせて検討した結果、A群(10.1→5.5スコア:P<0.05)では便秘改善効果がみられたが、B群(6.2→4.3:NS)では有意な改善効果はみられなかった。対象者10%に下痢の副作用を認めた。 【考察】便秘を認める患者でポリマー系リン吸着剤からFCHへ変更することで有意な便秘改善効果を認めたが、FCH自体には有意な便秘改善効果を認めなかった。副作用で10%に下痢を認めるため、投与の際は腹部症状に注意していく必要がある。

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第60回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

第60回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

第60回日本透析医学会学術集会が、6月26日(金)~28日(日)の3日間、横浜市で開催されました。 当院からは17名参加し、リハビリテーションのセッションの座長として奥田院長が出席しました。また、新規リン吸着剤のリン吸着効果・貧血改善効果・便秘改善効果について検査部と栄養部でそれぞれ1演題ずつ報告致しました。 発表後、参加者が横浜市内で夕食をとり、その後ランドマークタワーで横浜湾の魅力溢れる夜景の美しさに感動致しました。今回の学会参加で得た情報を今後の透析医療に反映させていこうと思います。 ①透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の鉄動態への影響と貧血改善効果の検討 ○古澤洋一、中野紗希、高橋 梓、大盛千恵、遠藤佳緒里、新井和恵、神山康子、小原 梢、高橋秀明、奥田康輔 【目的】鉄含有の新リン吸着薬,FCHの鉄動態影響と貧血改善効果の検討 【対象】当院維持透析患者37名(男性23名、女性14名)平均年齢:64.0±14.8歳、平均透析歴:12.8±11.5年(DM15名、非DM22名)ESA製剤を使用しており、1年以内に鉄剤使用歴のある高リン血症患者を対象とし、FCHを新規に開始、もしくは他のリン吸着剤から切り替えた。塩酸セベラマー、ビキサロマーで便秘がある患者、炭酸カルシウム3g/日以上内服している、または補正Ca9.0mg/dL以上の患者は積極的にFCHに切り替えた。 【方法1】FCH投与量は、750~1500mg/日と少量に留めた。リン吸着剤の切り替え方法 セベラマー(250)4T,ビキサロマー(250)4C,炭酸ランタン(250)1T,炭酸カルシウム(500)1T→FCH(250)2Tに切り替えFCH投与開始前と開始後1,2,4,6ヶ月の血清リン、補正Ca、iPTHの各測定値を検討。FCH各のリン吸着効果を検討するため、リン吸着剤の1日当たりの投与量を下記の方法でスコア化しその合計の経過を調査。 【結果】FCH投与前後半年間の検討では血清P,補正Ca,iPTHに有意差なし。リン吸着剤総合スコアに変動はなかった。TSAT,フェリチン、HbはFCH投与後有意に上昇した。その結果フェジン投与量は有意に減量出来た。ESA投与量はFCH開始1ヶ月より減量出来、2ケ月以降有意に減量出来た。副作用で37名中8名が中止した。内訳は下痢4名(10.8%)フェリチン上昇2名(5.4%)、Hb上昇2名(5.4%)であった。 【考察】血清リン濃度とリン吸着剤投与量総合スコアの経過に変動がなかったため、FCHのリン吸着効果は、切り替え設定相当の効果があったと考えられた。貧血改善効果は含有成分の第二鉄が影響し、ESA、フェジン投与量減量に繋がっていると考えられた。FCH少量投与に留めたにも拘わらず、フェリチン過剰となる患者もおり、鉄動態を十分にモニターする必要がある。 ②透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物(FCH)の便秘改善効果の検討 ○遠藤佳緒里、大盛千恵、新井和恵、神山康子、小原 梢、古澤洋一、高橋秀明、奥田康輔 【対象】①報告と同じ年齢、透析歴、人数、高リン血症患者で塩酸セベラマー、ビキサロマーで便秘がある、あるいは内服しにくい患者。または下剤を内服している患者に対し積極的に切り替えた。 【方法1】①報告と同じ 【方法2】FCHの内服前後の便秘状況をRomeⅡintegrativeアンケートにて数値化し比較。下剤量をアローゼン®1包、プルセニド®1錠、麻子仁丸®1包を各1点、ラキソベロン®10滴を各1点として数値化し比較。 また便秘改善効果がFCH自体によるものか、ポリマー系リン吸着剤の減量や中止によるものかを検証するために下記のA群、B群に分け比較検討した。 A群:ポリマー系リン吸着剤を減量または中止した群(N=11) B群:ポリマー系リン吸着剤を変更していない群(N=18) 【結果】①報告と同じでリン吸着剤スコア、血清リン、補正Ca、iPTHにも有意差はなかった。FCH投与後全体の便秘スコアは1ヶ月以降低下傾向を示したが有意差はなかった。硬便スコアが開始2ヶ月目は有意に低下し、軟便化の傾向を示した。A群では便秘改善効果が見られたが、B群では期待された様な便秘改善効果は見られなかった。 【考察】FCHのリン吸着効果は①報告と同じ。ポリマー系リン吸着剤を内服し便秘を認める患者にとってはFCHに変更することによって、便秘改善効果を認めたが、FCH自体には期待された様な便秘改善効果は見られなかった。下痢等の腹部症状で継続が出来ない患者を10.8%認めたため、FCH投与する際には注意していく必要がある。 以上

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第37回 栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。

第37回 栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。

9/20(土)、独協医科大学で開催された、栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。 奥田クリニックからは「当院のVA(Vasucular access)管理におけるエコー検査について」の演題を発表し、優秀演題賞を受賞することができました。今後はVA管理にエコー検査を十分活用し、当院の理念であります、患者様に安心安全な医療を提供して行きたいと思います。 当院のVA(Vascular access)管理におけるエコー検査について (医)開生会 奥田クリニック ○古澤洋一(フルサワヨウイチ、臨床検査技師)、 中野紗希、高橋 梓、井上靖宏、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、 越井正太郎、古沢幸男、村山 勉、一杉政弘、新井美明、高橋秀明、奥田康輔 【目的】当院でのVA管理は基本的に視診、触診、聴診等の理学所見を用いている。今回、エコー下での上腕動脈血流量(Volume flow以下VF)、血管抵抗指数(Resistance Index以下RI)を測定し、これら機能評価がVA管理に繋がるか検討した。 【方法】2013年6月から1年間でVAのエコー機能評価を実施した当院維持透析患者様46名(男性25名、女性21名)を対象とし、PTA群(再PTA重複あり48症例)と経過観察群(22症例)に分け、春口ら報告の脱血不良とVF,RI関連研究の基準値を参考に解析した。また当院1年間でVAが閉塞し再造設した症例も同様に解析した。 【結果】①VAの狭窄が推測される値(VF:500ml/min未満,RI:0.6以上)はPTA群でVF:36/48症例(75%)RI:32/48症例(66.7%)だった。そのうち、再PTAになった17症例中15例がこの基準に該当していた。経過観察群ではVF:7/22症例(31.8%)RI:3/22症例(13.6%)が該当し、その中で1~2か月以内にPTAが3例、VA再造設が1例あった。②この1年間で、VA閉塞のため再造設したのは12件あったが、そのうちエコーを行っていたのは5例で5例とも上記基準に該当していた。 【考察・結論】PTAに至った症例の多くでVF,RIはVA狭窄が推測される基準範囲にあった。VA閉塞で再造設した症例も同様で、PTA早期治療介入の必要性が示唆された。理学所見は主観的で曖昧さがあり、エコーを行わず、突然シャント閉塞した症例もまだ目立つため、今後は客観的評価によるVF,RIをスクリーニング的に測定し、突然のVA閉塞に備えることが必要と思われる。

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第59回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

第59回 日本透析医学会学術集会に参加しました。

第59回日本透析医学会学術集会が、6月13日(金)~15日(日)の3日間、兵庫県神戸市で開催されました。全体の参加者が18000名で、とても盛況な学会でした。当院からは9名参加して2演題発表しました。 発表後、全員神戸市内で夕食をとり、その後神戸市内を一望出来るビーナスブリッチという小高い観光名所に行き神戸市の夜景に感動致しました。 今回の学会参加で得た情報を今後の透析医療に反映させていこうと思います。 ① 栃木県透析医会における震災対策の現状 奥田 康輔:1、新井 美明:1、安藤 康宏:2 1:奥田クリニック、2:自治医科大学附属病院 透析部 2011年の東日本大震災の際には、栃木県でも多くの施設が透析不能に陥った。同年に行った震災後の県内透析施設のアンケート調査にて、赤塚が提唱する4つの地震対策の遵守状況と機器の損壊との関係を調べたところ、遵守していない施設で機器の損壊が多かったことから、対策の重要性を呼びかけてきた。2013年6月の日本透析医会災害時情報ネットワーク会議での赤塚の報告によると、4つの地震対策の遵守率が高い宮城県では、震度が大きかったにも拘らず、他県と比較して機械の損壊率が低く対策の有効性が示唆された。これを受け栃木県の調査結果を分析し直したところ、宮城県と比べて遵守率が低く震度が小さかったにも拘らず機器の損壊率が高かったことが分かった。本年8月に改めて4つの地震対策の遵守率を調べたところ、震災時より遵守率は改善されていたものの、4つの対策のうち「RO装置、供給装置の壁面へのアンカーボルト固定」の遵守率は震災前27%→震災後42%とまだまだ改善の余地があり、引き続き対策の徹底を呼びかける必要があることが判明した。 ② 当院におけるエポエチンκの使用経験 古澤 洋一:1、中野 紗希:1、高橋 梓:1、高橋 秀明:1、奥田 康輔:1 1:奥田クリニック 【目的】従来ESA製剤からエポエチンκ(Bs)切替えによる検討. 【方法】当院維持透析患者でエポエチンβ(EPO)使用群49名、ダルべポエチンα(DA)使用群11名をBsに切替え1年間毎の切替え前後を調査した。目標Hb値を10.0~11.5g/dLとし、投与薬剤を適宜増減した。検討項目はHb値、ESA投与量、鉄代謝関連検査とした。切替え効果は1年毎平均ESA投与量で比較し、EPOは同単位量で、DAは2010年当会報告済みEPO→DA変更時の換算比1:258を用いた。対象はEPO継続群14名.統計でp<0.05を有意差有りとした。 【結果】Bs切替えでHb値に有意差はなかったがESA投与量はEPO:3950→Bs:4543U/w:p<0.001、DA換算値:3369→Bs:4253U/w:p<0.01と有意に増加した。対象EPO継続群1年前後EPO投与量(4014→4179 U/w:ns)に変化はなし。切替え効果はEPOの力価を1倍に対しBsはEPO切替え群0.87倍、DA切替え群0.79倍でDAの平均換算比は1:325であった。また薬価ベースではBs切替えでコストダウンが図れた。 【結論】後発品Bsは、従来品ESA(EPO・DA)と比較し、Hb値を維持するため、ESA投薬量増加の必要性が示唆された。

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9/28 第36回 栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。

9/28 第36回 栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。

9/28、とちぎ健康の森で開催された、第36回 栃木県透析医学会 学術集会に参加しました。奥田クリニックからは以下の2題を発表しました。 報告:栃木県透析医会の災害対策の取り組み 1.県内透析施設の災害対策の現状 奥田クリニック 奥田康輔 詳しい内容はこちらをクリックしてご覧下さい。 当院でのハイブリッド型バルーンカテーテルMusutang TM(マスタング)の使用経験 奥田クリニック ○新井美明(アライヨシアキ 技士)、岩波沙織、歌田智也、田崎浩孝、越井正太郎、村山勉、高橋秀明、奥田康輔 【目的】マスタングバルーンカテーテルはBoston Scientific社から発売になった標準型バルーンカテーテルである。シャント静脈狭窄部を高圧で加圧でき、吻合部も拡張できるハイブリッド型のバルーンカテーテルとして開発された。当院でマスタングバルーンカテーテルが複数の狭窄病変のある患者さんへの有用性を検討したので報告する。 【対象】当院で透析を行っている患者さんでマスタングバルーンカテーテルを使用開始した2012年3月より前後15ヵ月間でPTAを行った症例。 【方法】、PTA施行時における治療時間、拡張回数等について、マスタングバルーンカテーテルの使用前後15ヶ月を比較検討した。また、マスタングバルーンカテーテルの使用症例に対し、再PTAまでの日数を調査した。 【結果】マスタングバルーンカテーテル使用前後で治療時間には変化はなかった。拡張回数はマスタングバルーンカテーテル使用後で減少した。マスタングバルーンカテーテル使用開始後での再PTAまでの日数はマスタングバルーンカテーテル使用開始前と比較して延びた症例が多かった。 【結語】マスタングバルーンカテーテルはシャント静脈を高圧で拡張でき、吻合部も同時に治療できる複数病変に対応したバルーンカテーテルと思われる。

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第58回日本透析医学会学術集会・総会に参加しました。

第58回日本透析医学会学術集会・総会に参加しました。

第58回日本透析医学会学術集会が、6月21日(金)~23日(日)の3日間、福岡県博多市で開催されました。 当院から「当院におけるエポエチンκ(BS)の使用経験」「当院における運動療法の取り組み 第1報」「当院における運動療法の取り組み 第2報車いすから自立歩行に至った症例」として計3演題の発表をしました。 内容は従来品エリスロポエチン製剤からの切替え効果の検討と当院の運動療法定着方法の紹介並びに運動療法成功体験の症例発表です。今回の発表を今後の透析医療に反映させて行きたいと思っています。 当院におけるエポエチンκ(BS)の使用経験 (医)開生会奥田クリニック ○古澤洋一 中野紗希 高橋 梓 那須瑞志郎 奥田康輔 【目的】従来ESA製剤からエポエチンκへの切替えによる検討 【方法】当院維持透析患者でエポエチンβ(EPO)使用群57名、ダルべポエチンα(DA)使用群14名をBSに切替え、半年毎のデータを調査した。目標Hb値を10.0~11.5g/dLとし、投与薬剤を適宜増減した。検討項目はHb値・ESA投与量・鉄代謝関連検査とした。切替え効果は半年毎の平均ESA投与量で比較し、EPOは同単位量で、DAは2010年当会で報告したEPO→DA変更時の換算比1:258を用いた。対象はEPO継続群17名。統計解析はt‐検定でp<0.05を有意差有りとした。 【結果】BS切替えでHb値に有意差はなかったが、ESA投与量はEPO:4308U/w→BS:5160(p=0.037)で有意に増加、DA換算値:3802U/w→BS:4586(n.s)で有意差はなかったが増量傾向であった。切替え効果はEPOの力価を1とするとBSは0.83倍、DAに対しBSの平均換算比は1:312であった。対象のEPO継続群のEPO投与量は4449U/w→4793(n.s)で変化はなかった。 【結論】後発品BSは、従来品ESA(EPO・DA)と比較して、Hb値を維持するために、ESA投薬増量の必要性が示唆された。 当院における運動療法の取り組み 第1報 (医)開生会奥田クリニック ○新井和恵 高村キエ子 田崎まち子 阿久津素子 越井正太郎 古沢幸男 古澤洋一 奥田康輔 N・S・リンク 有田しのぶ 【背景】運動療法によって、生命予後やADL・QOLが向上する事は知られているが、運動習慣を定着させる事は重大な課題である。当院では多施設共同の運動習慣定着への取り組み(下野運動療法勉強会=STEC)に参加しており、その一環で2011年2月から、健康運動指導士の介入による、透析患者向けの運動療法を定期的に行ってきたので報告する。 【目的】透析患者の運動習慣定着 【方法】1.透析患者とスタッフの身体活動量調査。2.運動療法の実施と継続指導への声かけ。3.お花見ウォーキング。4.穿刺待ち時間の体操。5.定期的なスタッフ体操。 【結果】当院患者の身体活動量はスタッフ(平均33.3Ex/週)に比べ少なく、平均15.8Ex/週であった。患者で運動療法に係わった人は51名いた。穿刺の待ち時間を利用したストレッチ体操は1名だったが、現在は14名に増加し継続している。 【考察】運動療法の定着・継続するには、スタッフもレクリエーション的に楽しみながら、患者さんにアプローチし、成功体験を積ませ、進んで参加する意欲を持たせることが大切であると思われた。 当院における運動療法の取り組み 第2報 ~車いすから自立歩行に至った症例~ (医)開生会奥田クリニック ○高村キエ子 小原梢 田崎まち子 阿久津素子 越井正太郎 古沢幸男 古澤洋一 新井和恵 奥田康輔 N・S・リンク 有田しのぶ 【背景】当院では2010年より多施設共同の運動習慣定着への取り組み(下野運動療法勉強会=STEC)に参加している。 【方法】2011年から月2回、健康運動指導士による、HD患者向けの運動療法を継続中、今回運動療法にてQOL・ADL向上を見た患者症例を報告する。 【症例】52歳 男性 原疾患:DM腎症 HD歴3年4ヵ月HD導入後右被殻出血による左完全麻痺で入院、リハビリ後、当院へ通院透析となった。左半身完全麻痺に近く、車いすの状態だったが、自立歩行にて外出したいという強い希望で健康運動指導士による介入を開始した。 【結果・考察】健康運動指導士の介入、スタッフの声かけで運動を継続し、車いすの生活から自立歩行が可能となり、一人で電車通院(眼科)や友人宅の外出が出来るようになった。現在は職場復帰を果たし、運動療法の効果を実感している。 運動を継続定着には、患者本人の明確な目的意識と患者の意欲を維持するための専門家、周りのスタッフの支援が大切である。

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